2004年01月14日

小津映画「母を恋わずや」

映画が始まって10分くらい後で見始めた。だから最初の方は見ていない。出だしの感触はなかなかよい。異母兄弟の話なのですね。こんなに若い笠智衆は初めて見た。「おおっ! 笠智衆にも青春時代があったのか」という新鮮な驚き。だってこの人はそんなに歳でもないのにフケ役ばっかりなんだもの。兄の方は実の母親でないので多感な青春時代を苦悩する。母親は実の子ではないので長男のほうには何かと気を使う。そんな母親の気遣いが長男にしてみれば、心の影になってしまうという…そんな映画ですね。
最初の感触はよいのですが、深く感動できない。たぶん映画の冒頭と最後のフィルムが残っていても同じだろうと思う。生意気なことを言わせてもらうとシナリオが中途半端なのです。もっと母親の心理を照射するとよかったのではなかろうか。

そこで福助ならこうする。

弟をもっとグレさせる。赤線、青線入りびたり、「非常線の女」に出てきた弟のようにチンピラ仲間に入り、盗みをして警察のお世話になる。母親は弟のために面会、差し入れに通う。そんな弟に対する母親の愛情に兄は嫉妬する。母親をなぐり自暴自棄になって赤線、青線入りびたりという弟と同じコース。ある日、ひょんなことから娼館ではたらくお掃除おばさんが自分の母親だと判明する。(ここが重要!)この実の母親が悪い女で最初は「お前!ずっと会いたかったんだヨ」などと涙ながらに昔話を語るが、それはすべて嘘。兄は実母の涙にだまされていろいろと悪いことを始める。女衒、カツアゲ、盗みなど。そんな末にヤクザとのトラブルから刑務所送りとなる。そこで兄は初めて自分が実の母親に騙されていたことに気づくが時すでに遅し。
蛍雪何年かののち、兄は出所してから、育ての母に会いに行く。家はボロボロのあばら屋と化しているが、そこには老いて盲目になった母がいる。「誰なんだい?ちかごろは子供がメクラにイタズラをするんだよ」「お母さん、ぼくですよ。この家に入る資格などありゃしませんが、今務めを終えて帰ってきました」「おおっ!お前かい。もっとこっちに来て顔をさわらせておくれ。あたしゃもう目が見えないんだよ」
そこで母子しっかりと抱き合う。母が語るには弟はずいぶん前に亡くなったという。
兄「お母さん。こんな僕を許してくれますか?」
母「許すも許さないもないだろう。あんたは最初からあたしの子だよ」
兄「…ありがとう。お母さん。あなたはほんとうのお母さんだ!」
と、ここで幕。

ほんとわたしのようなシロートは好き勝手なことが言えるものです。小津ファンのかた、すみません。

という小津映画の感想をここでやっています。

Posted by fuqusuke at 2004年01月14日 13:30
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