先週の土曜日に「めぐりあう時間たち」という映画を見ました。
この映画は三つの時間が織り成す物語で、その時間とは1920年代ロンドン郊外のリッチモンドで「ダロウェイ婦人」の執筆をしているヴァージニア・ウルフ、1950年代ロサンジェルスで「ダロウェイ婦人」を読んでいる主婦ローラ・ブラウン、そして現代のニューヨークで編集者をしているクラリッサ・ヴォーンの生活している時間です。
映画はニコール・キッドマンが演ずるヴァージニア・ウルフが自宅ちかくの川で入水自殺するシーンから始まります。ヴァージニアはこの時59才でした。少女時代からヴァージニアは精神病を患っていたのですが、レナド・ウルフと結婚後も発病し病気療養のため閑静なリッチモンドに引っ越してきます。夫のレナド・ウルフはその地で出版社ホガース・プレスを開業します。映画では夫のレナドが自宅にある活版印刷所みたいなところで働いている姿が出てきますが、あれがホガース・プレスなのです。印刷の組版までやる出版社だったことがわかります。ヴァージニアの作品は処女作を除くとすべてこのホガース・プレスから出版されています。
映画を見終えたあとで福助ホームページの「読書」のコーナーhttp://fuqusuke.web.infoseek.co.jp/book_top.htmで紹介したことがある神谷美恵子がヴァージニア・ウルフについて書いた本があったと思い出して書棚の奥をさがしてみました。ありました。みすず書房刊の「ヴァジニア・ウルフ研究」。この本は神谷美恵子の晩年のライフワークで精神病理の視点からウルフについて書いています。本の最後には神谷美恵子が86才になったレナド・ウルフを訪ねる「訪問記」も載せられています。この後神谷美恵子とレナド・ウルフとの間には20通にのぼる手紙が交わされたようです。
映画がおもしろかったのでその余韻を味わうために神谷美恵子の「ヴァジニア・ウルフ研究」を読んでいます。