わが家からさほど遠くない町(群馬県新田町)で毎年恒例の「日本映画史フェスティバル」が始まった。この映画祭はこの町の出身の日本映画史研究者田中純一郎氏を記念した催し物で、今年で6回目になります。
本日の上映は成瀬巳喜男監督の「稲妻」と中村登監督の「紀ノ川」でした。
「稲妻」高峰秀子が観光バスの車掌さんをしていて、どうやら銀座や浅草近辺をガイドしています。子供が下車するときには体を抱いてやったりする気遣いある車掌さんです。このバスが今じゃお目にかかれないボンネット・バスで郷愁を誘います。東京の風景も敗戦から10年足らずなのでオート三輪が走っていたり、街の看板の書体などになかなか味わい深いものがあります。日本の住居とは木造なんだとあらためて感じさせます。高峰秀子のお母さん役が浦辺粂子なのですが、このお母さんは4回も結婚しているので高峰秀子の兄弟はそれぞれ父親が違うのです。姉がふたり、兄がひとり、バスガイドの高峰秀子は末っ子みたいです。彼女も結婚適齢期らしくお見合いの話もあるのですが、なかなかその気になれません。と、書くと小津映画の原節子の役どころを彷彿させますが、一番の違いは原節子が山の手のお嬢さんであるのに対して高峰秀子が下町の娘なのです。原節子が結婚しないのを結婚モラトリアムというなら、高峰秀子が結婚しないのは姉たちや母親のうんざりするような結婚の現実を見てしまっているからなのです。
そんな彼女はある日、実家を出てひとり世田谷で借間暮らしを始めます。隣の家には、それまで高峰秀子が接することがなかったような兄妹(妹役は香川京子)が住んででいて、次第に親しくなっていきます。
原作は林芙美子。脚色は「花の百名山」の田中澄江。
写真上 新田町文化ホールの緞帳。女性のドレスがなんかクリムトぽい感じでした。
ところで「紀ノ川」の紹介はどうしたのか?有吉佐和子の原作らしいのですがピンとこないのです。田村高廣が長男役で出てたなぁとか、「大霊界」の丹波哲郎が次男役で出ていたなぁとか、音楽は武満徹だったなぁと思うくらいなんですね。どうも女性一代記みたいなものはニガテです。すみません。
Posted by fuqusuke at 2003年09月04日 20:28