この映画、東京でしか上映しないのかと、思っていたのですが、調べてみるとぼくが住んでいる群馬のシネコンでも1日に1回だけ上映していることが判明。監督のペドロ・アルモドバルの前作「オール・アバウト・マイ・マザー」がとてもよかったので、今回の作品はどんなものだろうと、昨夜見て参りました。
シネコンには若者たちがわんさか…まるでここだけお江戸の渋谷村みたいでした。もっと驚いたのはこの「トーク・トゥ・ハー」を上映する館内にけっこう入場者がいたことです。観客のお目当ては「踊る大捜査線2」か「パイレーツ・オブ・カリビアン」か「ターミネーター3」かと思われたのに、「トーク・トゥ・ハー」という地味な(他に較べると)映画に入場者がいたのには驚きでした。きっと群馬の観客は目が肥えているのだと思われました。
この映画を見てよかったところ。
1 ブラジル・ミュージック界の大御所といわれているカエターノ・ヴェローゾの「ククル・クル・パロマ」の歌。これがこの映画で一番よかったです。
2 ヘビー・スモーカーでありながらダンスを頑張っているピナ・バウシュをTV以外で見られたこと。
3 ジェラルデン・チャップリンさんも高齢ながら(たぶん)健在であったこと。
4 眠れるダンサー・アリシアの裸体がきれいだったこと。
以上です。映画評論家のおすぎさんがこの映画を絶賛していますがひとそれぞれ十人十色の感じ方があるものです。
映画「トーク・トゥ・ハー」のサイト
http://www.gaga.ne.jp/talktoher/top/top.htm
先に書いた「麻生八咫の大活弁」を昨日藤岡市に出かけて見てきました。「みかぼみらい館」は平成7年にできたプラネタリュウムもあるなかなか瀟洒な建物でした。
活弁を簡単に説明すると、昔のサイレント映画に弁士がナレーションや台詞を入れることです。かっての活動写真(映画)には、この活弁がつきもので多くの活弁がいたのですが、映画の技術が進歩しフィルムに音声も加えられたトーキーになってからは、その職業はすたれてしまいました。
麻生八咫(あそうやた)さんはその活弁の仕事を現代にも生かし続けようとしている稀有なかたです。
公演が始まる前に会場をのぞいてみると、麻生八咫さんと娘さんの子八咫さんが本番前のスクリーン映像や音響、照明などのタイミングを熱心にチェックされていました。使っている機材はフィルムの映写機ではなくビデオ・プロジェクターです。なるほどと思いました。活弁と聞けばノスタルジア溢れるもので、つい昔の無声映画のフィルムを映写機のリールにかけて…と思い込みがちなのですが、時代は今や21世紀、ビデオ・プロジェクターのほうが手間が省けるわけですね。そのプロジェクターの隣りにバック・グランドミュージック用のアンプみたいな機器がありましたが、これの担当は娘の子八咫さんでした。
カメラで弁士とスクリーンが同時に写せる場所はないものだろうか?とあたりを見回すと、会場の側面上方にバルコニー席というのがあった。よく外国映画の劇場シーンに見る貴族などのやんごとなきお方たちが羽団扇を持ち観劇している、あれです。雰囲気はかなり違うが椅子の背もたれがマッキントッシュのように高くなっているので、それなりの感じは出ている。よし。あそこならスクリーンも活弁士もうまく画面に納まるだろうと、座席は「バルコニー席」に決める。
そのうち時間となり、会場の照明が暗くなると麻生八咫が黒いモーニングを着て鉦と太鼓を組み合わせた楽器「チンドン」を鳴らしながら会場左手の扉から表れる。まるでお祭りの雰囲気だ。
そのまま正面の舞台に上がると「フランスのルミュール兄弟、アメリカのエジソン…」という活動写真の生い立ち、活弁士の由来を軽く述べると「本日はにぎにぎしくもご来館をたまわりましてまことにありがとうございます。それでは映写用意…スタート!」の口上で「大活弁」が始まる。
サイレントの映像だけならば、それは古い日本家屋の土蔵の中のような陰惨とでもいうべきものだ。暗くハイ・コントラストの画面は時間の経過により雨が降っている。チョンマゲを結った男たち、着物姿の女たちは声はしないのに口をパクパクさせているだけだ。その映像に生命の息吹をもたらすのは活弁士に他ならない。麻生八咫はその死せる映像に命をあたえている。音楽を聴くようなナレーションで、さまざまの人物の声を使い分け、鉦や太鼓の「チンドン」で音響効果を与え、時には身振り手振りでお侍、侠客、町娘など銀幕のの人物になってしまう。そのとき活動写真は永い眠りからようやく目を覚ますようだっだ。
上映パンフレットでは「血煙り高田の馬場」「血煙り荒神山」「国定忠治」だったのだが、この日の最初の上映に「野狐三次」の1本が新たに加えられた。なんか得した気分になりました。
写真(上)公演前のリハーサル。スクリーンの画面は「国定忠治」。
写真(下)本番は鉦と太鼓を組み合わせた楽器「チンドン」を身につけて登場しました。
麻生八咫オフィシャル・サイト
http://www.sunforce.co.jp/yata/index.shtml
麻生八咫・子八咫本舗
http://www.katsuben.com/
来る8月10日(日)に群馬県藤岡市の「みかぼみらい館」で第9回「群馬アジア映画祭」の催しがあります。上映作品は以下のとおり。
1) 「風の丘を越えて」 1993年 韓国作品 イム・グォンテ監督
2) 麻生八咫の大活弁 上映作品 「血煙り高田の馬場」 1928年 伊藤大輔監督 「血煙り荒神山」 1929年 辻吉郎監督 「国定忠治」 1925年 牧野省三監督
3) 「5月の雲」 1999年 トルコ作品 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督
4) 「グリーン・デスティニー」 2000年 アメリカ・中国合作 アン・リー監督
この映画祭の目玉は、なんと言っても無声の邦画を麻生八咫さんの活弁でやる企画だと思うのですが、この企画を「グリーン・デスティニー」というほとんどハリウッド映画といってもよい映画や韓国映画、トルコ映画を組み合わせたプログラムに地方性が滲み出ているようで、味わい深い企画になっています。
詳しくはこちら
http://www.city.fujioka.gunma.jp/mirai/
群馬県新田町の文化会館エアリスホールで8月30日から9月7日まで、恒例の「日本映画史フェスティバル」が開催されます。
入場券 1日券 500円 通し券 1500円
詳しくはこちらです。
http://www.airys.net